緑内障になったら失明するの?!早期発見のために眼圧・眼底検診を受けよう

視覚機能における加齢症状のひとつ「緑内障」ってどんな病気?
日本国内において、後天的な失明原因のトップの疾患が「緑内障」です。
緑内障とは、何かしらの原因で眼圧が高くなり、視神経が圧迫されることで視野が狭くなり、最終的には失明に至る病気。多くの方が一度は聞いたことのある「白内障」は、目の水晶体が加齢等によって白濁することで視覚機能が低下するのに対し、緑内障は
視野が狭くなったり欠損するのが特徴
で、言葉は似ていても視覚機能に対する影響度は、緑内障の方が圧倒的に深刻です。
緑内障という名称の由来は諸説こそありますが、古代日本や中国では緑内障を「青底翳(あおそこひ)」と呼んでおり、「底」は眼底、「翳」は影、つまり眼底がに障害があると盲目になることを意味しています。アジア人においては、黒目が青緑色に見えることはほとんどないようですが、言葉の由来としては
眼圧が高くなると角膜(黒目)が緑青色に見える
ということから名付けられているようです。
そんな失明リスクの高い緑内障ですが、緑内障有病率は以下の通りで
40歳代:男性2.1%・女性2.3%・全体2.5%
50歳代:男性3.5%・女性2.4%・全体2.9%
60歳代:男性5.9%・女性6.7%・全体6.3%
70歳代:男性10.5%・女性10.5%・全体10.5%
https://www.ryokunaisho.jp/general/
ekigaku/tajimi.php
ごらんのとおり、年を重ねるほどその罹患リスクが高まることは説明の余地がありません。全体的な有病率としては、全世代で約5.0%、約20人に一人が緑内障となり、うち25%が失明というデータもありますので、緑内障は怖い病気だということは間違いありません。
緑内障になってしまう原因は、様々な要因が複雑に絡みあっており
・加齢
・性別
・運動
・血圧
・近視や遠視 などなど
直接的な原因は、眼圧が高くなることで視神経がダメージを受けることで視野が欠損したり、見える範囲が狭くなったりしますが、
どうして眼圧が高くなるの?
と言えば、目の内部に栄養を与える「房水」と呼ばれる液体が、水晶体や角膜を通ったのちに静脈から体に排出されますが、この流れが何かしらの原因で詰まってしまい、房水がうまく輩出されなくなることで眼圧が高まります。目の中は、常に房水が満たされることで眼球の形を維持していますが、緑内障の多くは
房水の出口である隅角が詰まることで眼圧が高まり
主に網膜にある網膜神経節細胞がダメージを受けることで視覚機能が低下していきます。なお、この緑内障は眼圧が正常は範囲でも起こることがありますが、白内障のような回復を伴う手術療法はなく
眼圧を下げること以外に基本的な治療法がない
のが特徴でもありますので、特に40代以降は定期的な眼圧・眼底・視野検査などを実施して、緑内障の早期が重要となってくることは言うまでもありません。今回の記事では、そんな加齢に伴いリスクが高まる緑内障と、その予防・早期発見のための眼圧・眼底検診について詳しくご紹介いたします。
緑内障は一度進行してしまうと改善することがない恐ろしい疾病ということを認識し、定期的な緑内障検査の重要性について、今一度考えなおすきっかけにしましょう。
高血圧・喫煙・ストレス~中高年になると眼圧が高くなる理由

このように、緑内障は眼圧が高まることで視神経がダメージを受けることで症状が現れますが、この視神経は脳と同じ中枢神経であり、
一度ダメージを受けて細胞死すると再生することがない
ため、根本的な治療が眼圧を下げることしかできないのです。
この視神経は、約150万本ほどの神経線維が1本の束になっており、加齢によってもその線維は減少していきますが、健康診断などで行われる眼底検査では、この視神経線維が減少しているかを確認し、視神経の束が痩せているようだと緑内障が疑われるといったロジックです。
ちなみに緑内障においては、その特徴によって幾つかの分類があります。
1,原発性緑内障-原因が特定できない緑内障
・開放隅角緑内障
・閉塞隅角緑内障
・正常眼圧緑内障
2,続発性緑内障-白内障や糖尿病などの病気や薬物が原因の緑内障
3,小児緑内障-先天性の隅角異常や疾病により小児期に眼圧上昇する緑内障
中高年からシニアにかけて多く発症する緑内障は1の原発性緑内障であり、上記のとおり原発性緑内障はさらに3つの種類に分類されます。
■開放隅角緑内障
隅角は閉塞しておらず、逆に開放されているものの、房水が排出される際にフィルターの役割をする線維柱帯(隅角にある網目状の組織)が目詰まりを起こして、眼圧が上昇してしまうタイプ。
■閉塞隅角緑内障
隅角は閉塞し、静脈経由で体に排出されるはずの房水が眼球内に滞留することで眼圧が上昇してしまうタイプ。急性緑内障を起こすのはこのタイプで、短期間で失明するリスクも・・・
■正常眼圧緑内障
日本人に多いと言われるタイプの緑内障で、眼圧は正常なのに視神経に障害が起きており、その原因はあきらかにされていません。遺伝的な要因のほか、近視の人がなりやすいことが分かっています。
なぜ、中高年以降になると緑内障リスクが高まるの?
という点においては、
・眼圧調整の機能低下によって房水の排出がうまく行かなくなること
・視神経自体が減少して脆弱化すること
・糖尿病や高血圧などの生活習慣病も間接的な要因
・近視によって眼球が徐々に前後に変形し視神経がダメージを受ける
などが挙げられます。
その他にも、緑内障は遺伝的な要素もあったり、目に他の病気や手術歴がある場合もリスクが高まりますが、やはり加齢が一番の危険因子になると考えられており、個人差はあったとしても40代以降になると、
誰しも緑内障を発症する可能性がある
ということを認識しておく必要があります。
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上述のとおり、緑内障は白内障とは違い明確な治療法がないことから、対処としては高まった眼圧を下げてそれ以上の症状進行を抑制することが目的となります。また、緑内障の症状は無自覚で進行するため、早期発見・早期治療のためには
健康診断での眼圧・眼底検査が非常に重要
となることは言うまでもありません。
一般的な健康診断であれば、視力検査に合わせて眼圧検査・眼底検査も実施され、視覚機能の異常についての把握は比較的容易です。眼圧と眼底の名称については、少々医学的な用語となるため、一般の人には区別がつきにくいところではありますが
≪眼圧検査≫
眼球内の圧力を測定し緑内障の兆候を検査するもの
≪眼底検査≫
網膜や視神経、血管の状態を検査するもの
いずれも、緑内障の兆候のほか、糖尿病網膜症や、過去記事「▼ルテインに予防効果!目の老化「加齢黄斑変性」の基礎知識」でもご紹介している加齢性黄斑変性などが早期に発見できる唯一の検査となります。
なお、これまで「眼圧」については色々とご説明してきましたが、「眼底」についてはその字のとおり眼球の深層部の総称であり、眼球内に満たされた房水の底にあたる中心窩(ちゅうしんか)や視神経、視神経乳頭などで構成された組織の総称が眼底です。
また、眼底は、
体の外から血管の状態を直接見ることができる唯一の部位
で、眼底検査を行うことで、眼球や視神経の状態だけでなく、全身の血管の状態が予測でき、高血圧や糖尿病を要因とした動脈硬化のリスクなども眼底の状態から予測することができます。
おさらいとなりますが、緑内障は自覚症状がないため、個人での判断は不可能と言っても過言ではなく、毎年の眼圧・眼底検査の結果次第で、専門医の受診が必要になるケースは決して珍しいことではありません。また、
眼圧に問題がなくても眼底の状態が緑内障の可能性を示す
こと(正常眼圧緑内障)も少なくありません。
緑内障治療は直接的な治療がないため、視野機能の障害の進行を遅らせるためにも生涯に渡って通院・治療を継続する必要があります。経済的な負担やメンタル的な負担も大きくなりますが、治療を継続することで
失明の可能性をおおいに減らすこともできる
ので、生活に何ら支障を来たしていなかったとしても、緑内障の疑いが発覚した場合には、しっかりと専門医への受診、通院を継続するようにしましょう。