ウォーキング中に尿漏れ・・・運動中に起こる尿漏れのメカニズム

咳やくしゃみ・運動中などに尿漏れが起こりやすい原因は?
中高年女性を中心に、一度は経験があるであろう体の変化のひとつ「尿漏れ」。
特に尿意を感じている訳ではないのに、何かの動作の拍子にチョロっと出てしまうのが、この尿漏れの特徴であり、特に咳やくしゃみをした瞬間や何か重たい荷物を持ち上げた時、何かの運動中などに漏れてしまうことが多い傾向にあります。
体の変化に伴う尿漏れと言えど、一般的な認識としては「おもらし」といった印象が強く、
恥ずかしくて相談できず医師の受診もしたくない
というのが心情ではありますが、特に中高年における尿漏れは「加齢症状のひとつ」とも言えますので、むろん恥ずかしいことはありませんし、
老眼と同様に上手に付き合っていくという考え方も必要
日々の生活や運動習慣のなかで、徐々にその症状を抑えていくことは可能ですので、症状の程度にもよりますが、尿漏れ自体を悲観的に捉える必要はありません。なお、単に尿漏れと言っても様々な種類があることは、下記記事「▼尿漏れはなぜ起こる?尿漏れのメカニズムとその原因」でもご紹介したとおりですが、中高年女性に多い
何かの動作の拍子に無意識に尿が漏れるのは腹圧性尿失禁
と言い、その言葉のとおりお腹に力が入った時、腹圧が高まった時に尿が漏れるという症状です。成人女性の約3割程度で腹圧性尿失禁が認められ、近年では中高年に限らず20~30代でもこのタイプの尿漏れが増加傾向にあります。
腹圧性尿失禁は、膀胱と尿道を支えている骨盤底筋群という筋肉が
何かしらの原因で緩んでしまい、尿道を上手く閉じられなくなる
ことで尿漏れを引き起こし、程度によっては歩いているだけでも尿が漏れるようになります。あまり聞きなじみがない骨盤底筋とは、骨盤の底辺にあるハンモック状のインナーマッスルで、子宮や膀胱を支えているほか尿道や肛門などの開閉を司る重要な筋肉。
この骨盤底筋の働きが低下することで腹圧性尿失禁を引き起こす
というのが、この尿漏れタイプのメカニズムなのです。
今回は、そんな中高年女性に多い腹圧性尿失禁にフォーカスし、その原因と対策、尿漏れとの付き合い方などをご紹介していきます。特に女性における排尿においては非常にデリケートな部分であり、いくら加齢と言えども恥ずかしさは拭えないのが本音です。そうしたストレスを感じないためにも、腹圧性尿失禁をより理解して、しっかりと対策を講じるようにしましょう。
腹圧の高まりが原因!?尿道括約筋不全と尿道過可動について

上述のとおり、腹圧性尿失禁はお腹に力が入った拍子に、自分の意志に関係なく尿が出てしまう症状で、その原因は尿道を締める骨盤底筋群の働きが低下することにあることをお伝えしました。当然、次に考えるべき原因と対処は
なぜ骨盤底筋群の働きが弱くなるのか?
という点になりますが、第一に挙げられるのが加齢。そのほかにも女性ならではの出産や、便秘がちな女性に多い「排便時の強いいきみ」なども骨盤底筋の緩みの原因と考えられています。腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、ジャンプしたときなど腹圧が高まった時に尿が漏れるタイプですので、単純に考えると
腹圧が高まらない方が良い?
という発想になりがちですが、細かな説明は割愛するにして、腹圧が高いという状態は、腹部のインナーマッスルである横隔膜や骨盤底筋、多裂筋がしっかりと機能しており、「体幹がしっかりしている状態」となりますので、腹圧は低いより高い方が良いのです。ちなみに、膀胱は腹腔外臓器(腹部のインナーマッスル内にある臓器以外)であり、直接的に腹圧の高まりの影響を受けませんが、腹腔内の尿道においては腹圧の高まりによって尿が漏れないよう
尿道括約筋という筋肉が尿道を締めるように働く
ため、この筋肉が正常に機能していれば尿漏れには至りません。
このように、骨盤底筋のひとつである尿道括約筋の働きが弱くなることを尿道括約筋不全と呼び、さらに尿道括約筋不全に至ることで、尿道が膣のほうへ下がって開きやすい状態になってしまうことを尿道過活動と呼びます。いずれにせよ、骨盤底筋群の緩みが腹圧性尿失禁の原因であることから、対処法としては
尿道や肛門の周辺筋肉を締めたり緩めたりする骨盤底筋トレーニング
が有効であることは言うまでもありませんが、それ以外にも
腹圧が高め尿道を圧迫する要因に挙げられるのが肥満や便秘
特に中高年世代ともなりますと、相対的に体脂肪率が高まり内臓脂肪も増加しやすい年頃でもありますので、自ら取れる対処法として骨盤底筋トレーニングだけでなく、適度な運動による肥満解消や、食生活の見直しによる便秘解消なども合わせて対策を講じる必要があります。
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腹圧性尿失禁は女性特有の加齢症状~完治より対処法を知ろう

腹圧性尿失禁は、骨盤底筋群の緩みによって尿道を締める働きが低下することで生じることは分かりましたが、それであれば男性にも同様のことが言えるのに、なぜ中高年女性に多い症状なのでしょうか?もちろん、出産や尿道の長さなど女性の体特有の要因こそありますが、
そこには女性ホルモンの低下も影響している
ことが明らかになっています。
個人差こそあれど、女性は閉経前後の更年期になると女性ホルモンの分泌が低下します。女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」は、
筋肉や皮膚の機能を保護する働きがあり
尿道においても筋肉のハリを持たせ、骨盤底筋においても尿道を支える役割を担っています。「エストロゲン」の働きについては、過去記事「▼アンチエイジングホルモン・エストロゲンを味方に!」で詳しくご紹介しておりますが、更年期・閉経による女性ホルモンの減少が、尿漏れにも影響していると考えると驚かれる方も多いかもしれません。このような背景があり、
腹圧性尿失禁は女性特有の加齢症状
と言っても過言ではないのです。
これらを踏まえると、更年期・閉経による女性ホルモンの減少は避けられず、また出産経験もある女性においては、多かれ少なかれ腹圧性尿失禁の可能性が高いと言えますので、
こうした症状と上手く付き合い、いかに尿漏れの程度を抑えるか?
という点がとても重要になってきます。
もちろん尿漏れの程度によっては、専門医の受診・治療が必要になるケースもありますので、自身で判断せず受診することをお勧めしますが、ご自身で取れる骨盤底機能の維持・再建については、骨盤底筋トレーニングやスクワット、プランクなどを中心とした
インナーマッスルの強化が必須
という認識を持つと良いでしょう。
生活習慣や食生活を見直して、肥満や便秘を解消するのと同時に、インナーマッスルの維持・強化を目的としたトレーニングの習慣化を意識することで、尿漏れの抑制だけでなく、姿勢が良くなったり、基礎代謝が高まったりと様々なメリットが得られます。元々筋力の低い女性においては尿漏れを引き起こしやすいのが実情ですが、
日々のトレーニングで尿漏れを悪化させない
ということを主眼に、この加齢症状と上手に付き合っていくことが何より大切です。