見た目の対策だけじゃない!中高年からのエイジングリテラシーの重要性

日本は世界的に見て遅れてる?~エイジングリテラシーとは
人は当たり前のように年を取り、年齢を重ねるにつれ見た目が変化したり、体の機能が変化したりと、その進行速度こそ個人差はありますが、概ね本来の機能が衰えていくのが老化現象です。一般的には加齢も老化同義語として扱われますが、厳密には
- 加齢:歳を取ること
- 老化:加齢に伴う身体機能の衰え
と、その意味は異なり、さらに言えば
- 加齢:避けることができない
- 老化:努力次第で遅らせることができる
という観点では、まったく別の意味の言葉として捉えるべきかもしれません。
話は少し脱線してしまいましたが、上記のとおり誰しも平等に歳を取る(加齢)のに対して、老化については個人差が大きいため、多くの人が歳を取りたくない(老化したくない)と思うのが本音。特に日本国内においては、文脈によって「オジサン・オバサン」という言葉に揶揄的な意味合いを含むことから
歳を取るのはネガティブで悪いこと
という文化が根付いてしまっている傾向にあります。
ゆえに、加齢や老化に対しては非常に敏感でセンシティブな内容となりがちで、久々に会う友達に開口一番「老けた?」なんて言ったら、二度と口をきいてもらえなくなるくらい失礼な言葉になりかねませんが、この老化に対する嫌悪的なスタンスは
実は日本独自の文化であり
諸外国のそれとは概念がまったく異なるという点は覚えておく必要があります。
日本の文化としては、「アンチエイジング=若返ろう」という意識が強い傾向にありますが、アンチエイジングの意味合いとしては
老化を止めるのではなく進行を遅らせる
という意味合いとなり、老化現象自体は避けられないため、その老化による機能低下を可能な限り抑制しようというのが本来の意味となります。アンチエイジング自体、直訳すると「老化に抗う」という意味合いになりますが、諸外国におけるアンチエイジングに対するニュアンスは
健康寿命と生活の質を維持しようとすること
つまり、老化による体の変化や機能の低下を受け入れつつ、見た目や美容より健康の維持、身体機能の維持に重きを置いており、日本の文化における「見た目の若さを維持すること」とは、かなり認識が異なることがうかがえます。つまり、
- 日本のアンチエイジングは「見た目的に若さを保つこと」
- 諸外国のアンチエイジングは「健康を維持して活動的に生きること」
実はこの違いが健康寿命に大きな差を生む要因となります。
もちろん、日本におけるアンチエイジングの概念がまったく誤った方向に向いている訳ではありません。見た目の若々しさに関しては、男女問わずそれ自体がポジティブな要因になりえますが、せっかく見た目的に若々しくても
ロコモティブシンドロームでは本末転倒・・・
という考え方もでき、そうした観点で見ると、日本は諸外国とくらべ美容に関する意識は高くとも、健康維持に対するエイジングリテラシーに乏しいという側面もあるかもしれません。「ロコモ」に関しては、過去記事「▼大切なのは健康寿命!いつまでも元気でいるためのロコモ対策」を参照してください。
そこで今回は、そんな健康維持に対するアンチエイジングの意識を高めるための日常生活の心がけや老化に対する意識の持ち方、そして長く健康でいられるための生活習慣など、
中高年からのエイジングリテラシーの重要性
について詳しくご紹介していきます。
40代以降ともなると、身体の機能低下や見た目の変化が顕著化してきますが、それをどのように捉えるかで生活の質が変わってくることは言うまでもありません。「活き活きとした生活そのものが若々しさにつながる」という視点が持って、見た目だけにこだわらない中高年ライフを充実させましょう!
長寿大国と言えど健康寿命は延びていないのもエイジングリテラシー?

※画像出典:平均寿命と健康寿命 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/
hale/h-01-002
日本はご承知のとおり、世界的に見ても平均寿命が長い長寿大国。
長寿の背景には、医療の発達や先進的な医療が受けられる環境が整っていること、そして日本の食文化などが大きな要因として挙げられます。一方、「長寿大国」と聞くと、イメージ的には「健康的に長生きできる国」という先入観を持ちがちですが、実際に平均寿命の延びと健康寿命(日常生活に制限のない期間)の延びは概ね比例しており、
不健康な期間はあまり縮まっていないのも事実
少々分かりにくいかもしれませんが、例えば
- 平均寿命:80歳→85歳
- 健康寿命:70歳→75歳
- 健康でない期間:10年
だとした場合、平均寿命が延びた分、健康寿命はそれ以上に伸びれば不健康な期間が短縮される、つまり亡くなる直前まで健康的で、要介護ではない状態が維持できるのが理想ではありますが、足元の平均寿命と健康寿命との差の最新データ(令和4年)では
●平均寿命
男性:81.05歳
女性:87.09歳
●健康寿命
男性:72.57歳(差:8.49年)
女性:75.45歳(差:11.63年)
といった状態で、2001年(平成13年)のデータと比較すると
●平均寿命
男性:78.07歳
女性:84.93歳
●健康寿命
男性:69.40歳(差:8.67年)
女性:72.65歳(差:12.28年)
出典:厚生労働省「平均寿命と健康寿命をみる 2」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/
000637189.pdf
上記のとおり、平均寿命と健康寿命の差はあまり縮まっていないことが明らかになっています。
もちろん、ここ数十年でまったくその差が縮まっていない訳ではなく、1990年から2021年くらいまでは平均寿命と健康寿命の差が広がったものの、2021年以降は徐々に縮小傾向にあります。この平均寿命と健康寿命の差が示すものは、
1,生活習慣の影響
時短や効率を重視した現代社会における食生活の偏りや睡眠時間を犠牲にした慢性的な睡眠不足、それに伴う自律神経の乱れや運動不足による生活習慣病など、医療は進化しつつも、生活習慣や社会環境が健康寿命に影響している。
2,加齢による身体変化
医療が進歩しても老化現象は避けられないため、健康寿命は平均寿命ほど伸びにくい。ただし、加齢やアンチエイジングに対する意欲の高まりを背景に、適度な運動や食習慣の見直し意識が高まり、近年では健康寿命が多少延びる傾向にある。
3,社会的・環境的要因
孤独高齢者の増加や老々介護など、意欲や活動性の低下によって身体機能の低下が加速的に進行して健康寿命を縮める要因に。介護体制・人員の不足なども相まって、健康的行動の減少要因に。
これらのように、健康維持を主眼としたアンチエイジングの意識については、社会的環境にも影響されやすく、特に世代を越えた繋がりに乏しい日本の高齢化社会においては、主に70代以降の高齢者が孤立しやすく、その意欲が削がれやすい傾向にあるかもしれません。単に健康寿命を延ばそうとしても
社会的環境がその意欲を削いでしまう
という点が背景もあるのです。
単にエイジングケアに対する知識や意識といったリテラシーを高めるだけでなく、社会的環境が整わないと抜本的な解決には至りにくいのが実情ではありますが、年齢と共に低下しやすい健康維持に対する意欲をどのように維持していくか?という点が、現在の日本の高齢化社会の課題と言っても過言ではないかもしれません。
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これまでの解説だと、日本のエイジングは見た目や美容に全振りしているから、平均寿命は延びても健康寿命は延びない・・・というようにも思えてしまいますが、必ずしもそういう訳ではありません。近年では、相対的に健康意識も高まりつつあり、電通が実施したアンケート調査では
70代の約8割が「健康な人はかっこいい」と考えている
出典:電通調査レポート「ウェルネス1万人調査」
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0903-010932.html
といった調査結果もあります。
ただしこれら意識に対して、実際に運動などの何かしらの行動を起こしている人は約半数に留まっており、健康に対する意欲と行動にバラつきがあるのも事実。また、60~70代以降に意識が高まる「末永く健康でいたい」という意欲は、その時点から行動を起こしても骨密度や強度などは回復が難しい領域となりますので、
若い頃からの積み上げの差が出てしまう
のも事実です。
つまり、老化を意識しはじめる30代後半~40代くらいから健康寿命を延ばすための意識を高め、エイジングケアに対する知識と実際に行動を起こすことが重要で、早い段階から「老化による見た目の変化や機能低下は致し方ないこと」を理解し、
20~30年先を見据えて「いま何をすべきか?」という点を考える
ことも大切です。
世の中的にはどうしても「老化=ネガティブ」という印象が根強いため、見た目の対策に傾倒しがちな環境ではありますが、早めに老化を理解し受け入れることで取れる対策の選択肢が広がります。
例えば、老化現象の典型でもある老眼は、早めに老眼鏡を使用することで目の負担を軽減することができますし(参考記事:▼40代から考えるリーディンググラスとの上手な付き合い方)、年齢と共に低下する筋肉量においても、筋トレなどで筋肉が刺激されることによって骨の生成サイクルを促進することができます。(参考記事::▼軽視厳禁!加齢による筋量減少と骨密度低下のケアと対策)
では、実際にエイジングリテラシーを高めるためにはどのようにしたら良いか?
という点については、まず老化現象が現れる領域を把握し、日常生活のなかで自身が取れる対策領域を対処していくことが肝要です。
≪老化現象が現れる主な領域≫
- 筋肉・骨・関節
- 心臓・血管系
- 視力・聴力など感覚系
- 自律神経・代謝系
- ホルモン・免疫系
- 消化・泌尿器系
- 皮膚など外見系 など
老化は概ね全身で満遍なく進行するため、健康寿命を延ばす目的に限らず総合的に対処する必要があります。例えば、骨や筋肉であれば適度な強度運動、動脈硬化などを予防するためには食生活に留意して有酸素運動を習慣化する、目の酷使を避けて視力の低下を避けるなど、取れる対策は意外と多いもの。
数あるエイジングケアのなかで、すべてのケアを習慣化できるのが理想ではありますが、ご自身の生活習慣と照らしあわせ、実施できるケアを着実に積み上げていくことで、
まさに老後の自立度の明暗を分ける
と言っても過言ではありません。
そういう観点でも、エイジングリテラシーを高めることで、老化に対して適切に対応できる能力や知識を持つことが大切です。健康寿命を延ばすことで、ご自身の老後生活の質の維持はもちろん、介護者の負担軽減など社会的にも意義があるということの意識を高めていくことが課題と言えるでしょう。
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