糖尿病疑い1100万人!~2024年の国民健康・栄養調査から見えること

糖尿病疑い1100万人!~2024年の国民健康・栄養調査から見えること

糖尿病疑いとは?糖尿病疑いと糖尿病予備軍の違いと定義

一度はその疾病名を聞いたことがあるであろう「糖尿病」。

その名の認知度は高い一方、どのようなことが原因の病で、どのような症状が出るかなどは詳しく知らないという人も少なくありません。実のところ、その疾病名から「尿から糖が出る」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、必ずしも尿から糖が出る訳ではなく、何かしらの理由で血糖値が高くなると

腎臓が処理しきれなかったブドウ糖があふれ出て尿に漏れ出す

ことに由来しています。

少々おさらい的な内容となりますが、血糖値とは「血液中に含まれるブドウ糖の濃さ」であり、空腹時や食後などでその値は変化しますが、平常値としては空腹時で約70〜99 mg/dL、食後で140 mg/dL未満というのが平均的な数値です。

血糖値に関しては、一般的な健康診断での検査内容に含まれることが多いため、数値自体はご存じの方も多いとは思いますが、平均的な数値より低いと低血糖、高いと高血糖ということになり、日常生活のなかで食事や運動、睡眠、ストレスなどでもその数値は変動します。

本題となりますが、その血糖値が慢性的に高い状態が続く病気が「糖尿病」。
血糖値に関しては、高くても低くても健康リスクになりますが、慢性的に異常値が続くという点では圧倒的に高血糖の方が多く、そして糖尿病ともなると

体への悪影響も非常に大きい

ということは、概ね理解されているかと思います。

当Re:コラムでも、中高年からの生活習慣病に関しては数多く取り上げてきたところですが、今回、厚生労働省が8年ぶり(コロナ禍の影響等により)の公表した「令和6年 国民健康・栄養調査」によると、全国で糖尿病が強く疑われる人が推計で約1,100万人に上ることが明らかになりました。日本の人口が、2024年時点で1億2380万だとすると、

ざっと10%の人が糖尿病の疑い

ということになり、まさに国民病という位置づけになりますが、あまり実感がないのも事実です。

出典:厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/
001603146.pdf

上記国民健康調査にもありますように、セグメントとしては

・糖尿病が強く疑われる者(糖尿病の恐れ):1,100万人
・糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備軍):700万人

という区分けとなり、

・糖尿病の恐れは毎年平均10万人前後で増加
・糖尿病予備軍は毎年平均20~30万人前後で減少

ということがデータから分かります。

とりわけ昨今の高齢化社会においては、高齢者が増えることで「糖尿病の恐れ」の該当者が増える傾向にあり、平成9年のデータと比較しても特に70歳代以上が抜きん出て増加していることが明らかですが、それでも糖尿病が強く疑われる人と、糖尿病の可能性を否定できない人の合計が1,800万人ともなると、

国民の6人に1人が糖尿病ないしは予備軍

という現状をもう少し深刻に捉える必要があるかもしれません。

ちなみに「糖尿病の恐れ」と「糖尿病予備軍」とでは、その名称からも前者の方が、度合いが深刻なのは理解いただけると思いますが、実際にその区分の定義においては、医学的に以下のように定められており

●糖尿病の恐れ
ヘモグロビンA1cの値が6.1%以上
空腹時血糖126 mg/dL〜

※血糖値の単位mg/dLはミリグラム/デシリットル

●糖尿病予備軍
ヘモグロビンA1cが5.6%以上6.1%未満の人
空腹時血糖値:110〜125 mg/dL

この数値がひとつの目安になります。

40代以上の方は、毎年の健康診断で血液検査が義務化されており、少なくとも1年に1度は、空腹時血糖やヘモグロビンHbA1cの値を目にすることになりますので、すでに上記に該当している人もそうでない人も、もう少し糖尿病に対する知識や意識を高め、

糖尿病は深刻な疾病の一つであるという認識

を持つことから始めることが大切です。
この記事では、そんな糖尿病の原因や糖尿病予備軍になりやすい食習慣、そして糖尿病にならないための生活習慣など、糖尿病における様々な情報についてお届けいたします。6人に1人、つまり国民の17%程度が糖尿病を罹患するとなると、決して他人事ではありませんので、日常生活のなかでしっかりと糖尿病対策を行うよう心がけましょう。

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そんな身近な疾病でもある糖尿病ですが、多くの方が

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というイメージをお持ちかもしれませんが、上述のとおり糖尿病は、食事などで血糖値が高まる(スパイク)ことで、血糖値が慢性的に高い状態になり(高血糖)、その高血糖が動脈硬化や心筋梗塞を誘発し、体のいたるところにダメージを与えるというのが進行プロセスですので、決して甘い食べ物に限った話ではありません。

■糖尿病の症状進行プロセス

  • 炭水化物や糖質の多い食事・早食いなどで血糖値が上がる
  • 通常であれば血糖値が上がっても、インスリンが分泌され血糖値を下げる
  • そのうちインスリン耐性が高まって血糖値が下がりにくくなる(高血糖)
  • 血糖値が慢性的に高くなると糖尿病確定
  • 高血糖は全身の血管を弱らせて動脈硬化など合併症リスクが高まる
  • 目の網膜や足先などの血管も弱り栄養が届かなくなり免疫も低下
  • 糖尿病に失明や足切断が多いのは血管が損傷し壊疽しやすくなるから

というのが大まかな流れ。

あくまで、上記4番まで進行するまでは当然自覚症状もありませんし、血糖値が慢性的に高くなったとしてもあまり症状がでないケースも珍しくありません。ちなみに、糖尿病には大きく分けて2つの種類があり

●1型糖尿病
体の免疫異常によって膵臓のβ細胞が攻撃され、インスリンがほとんど作れなくなる後天的な病。小児から青年期に多く、免疫異常が起こる直接的な原因は解明されていません。糖尿病患者全体の約5%程度と言われています。

●2型糖尿病
肥満や過食、運動不足など生活習慣が深く関わる後天的なタイプ。糖尿病患者のおおよそ95%が2型で、「糖尿病=中年太りで自己管理ができない人」と思われがちですが、実は罹患者のなかでも太っていない人も多く、様々な要因が関わります。

前者は定期的にインスリン注射が必要となるため、すでに通院しているはずですが、後者においては

自覚症状がなく進行も緩やかなため発覚が遅れやすい

という傾向があります。

仮に、糖尿病の典型的な症状であるダルさや疲れやすさ、傷が治りにくい、目のぼやけなど視覚機能異常なども、日常生活のなかでは頻繁に起こることなので「疲れてるのかな?」といった程度で済ませてしまうのが、一段と発覚を遅らせる原因となります。多くの場合

毎年の健康診断で発覚する

ケースが多く、その時点ではすでに2型糖尿病として症状が出ている可能性があります。「血糖値がやや高いので生活習慣に気を付けましょう」といったレベルではほとんど症状はありませんが、症状が出るころには

血管や神経への負担が始まっている可能性

があり、早期通院が必要となるケースも少なくありません。
仮に自覚症状がなかったとしても、2型糖尿病の典型的な症状でもある

  • 多食・多飲・多尿
  • 全身の倦怠感や疲労感
  • 視覚機能の変化
  • 手足のしびれ
  • 口の異常な渇きと口臭
  • 感染症にかかりやすい

といった症状に見舞われるようであれば、毎年の健康診断を待つことなく、早めに専門医の診察を受けた方が良いでしょう。

2型糖尿病は「静かなる大病」とも言われるくらい無症状のまま

知らず知らずに症状が進行するのも特徴のひとつです。自覚症状が出るような段階だと、相当に進行している可能性があるということを覚えておきましょう。

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糖尿病疑い者数1100万人から見える働き世代へのメッセージ

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前段でもお伝えしたように、厚生労働省が公表した「令和6年 国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人が全国推計で約1,100万人に上ることが明らかになりましたが、実際に調査内容を深堀すると

全体数を押し上げているのが70歳以上の高齢者

で、日本の高齢化社会を考慮すると、概ね「高齢者が増えているから」というのが直接的な要因であるように見えます。世代別に見ても、例えば

働き盛りの30~40代においては概ね横ばいか微増

という状況ですので、現役世代の食生活や生活習慣が際立って乱れていたり、悪化していたりする訳では現状なさそうです。あわせて、日本政府の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」では、現状のペースだと糖尿病疑い者推計が、2032年度に約1448万人になるとして、1350万人に抑える目標値を掲げているようですが

本質的に高齢化が糖尿病疑い者を押し上げている可能性

を加味すると、問題の本質的な部分は生活習慣の改善ではなく、社会的構造そのものにあるのかもしれません。ただ、当然そのことは公表している側も理解しているはずですが、

ではなぜ1100万人と過去最大という強いメッセージを発するのか?

ということを考える必要があります。
恐らく、4~5年後の次回調査では、この1100万人をさらに上回り、過去最大を更新する可能性が高いと思われますが、こうした強いメッセージを発することで、

現在の現役世代に対する注意喚起になる

ということでもあります。
仮に、70代以上の糖尿病疑い患者が今後ますます増えるとなると、一番に考えられるのが「医療費の問題」。特に糖尿病治療は、

高齢者の医療費を押し上げる代表的な疾患

であり、その負担は当然現役世代にのしかかってきます。
そこで考えられるシナリオとしては、今よりもさらに保険料や税負担が増えることで可処分所得が減り、実質所得が減ることで食費を節約しようとする。つまり

価格の安いジャンクフードや腹持ちの良い炭水化物に偏る

ことが容易に想像できるのです。

世界的にも糖尿病を含めた生活習慣病は「貧困病」とも言われ、社会経済的地位が低いと糖尿病リスクが上昇すると数多くの研究で示されているのです。

出典:サイエンスダイレクト「社会経済的地位と2型糖尿病:社会的結束の媒介役割の検討」

https://www.sciencedirect.com/science/article/
pii/S0277953625003764

日本では、メディアの影響力もあり「糖尿病=本人責任」という見方が強い傾向にありますが、実は社会的な構造も大きく影響しています。糖尿病疑い者と予備軍の合計が1800万人ともなると、もはや「国民病」を通り過ぎている水準かもしれませんが、実際のところ2型糖尿病の多くは高齢者が中心ですので、

若年層や現役世代に危機感を広げたい

というのが、今回の厚生労働省のメッセージに含まれているのかもしれません。
もちろん、こうした推測は主観に過ぎませんが、生活習慣や食生活が糖尿病リスクを徐々に高めるとなると、若年層も決して他人事ではありません。また、運動不足や生活習慣の乱れが顕著となる

中高年世代の多くが糖尿病リスクにさらされる

わけで、そうした意識や危機感を高め「日ごろから食事や運動に留意しましょう」というメッセージとして捉えることができるのが、今回の調査結果ではないでしょうか?

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