大切なのは健康寿命!いつまでも元気でいるためのロコモ対策

無病だけが「健康」じゃない!健康寿命の定義を見直そう
誰でも「いつまでも健康で丈夫な体でいたい!」と思うのは当然ですが、そもそもこの「健康」というのは、一体どのような状態を指して言っているのでしょうか?。唐突なお話ではありますが、多くの方は「健康=無病」というイメージを持っている一方、
無病でも寝たきりの要介護状態は健康と言うか?
と言われると、それもまた考えさせられる部分かもしれません。
ちなみに、世界保健機構(WHO)憲章による「健康の定義」については、
・肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態
であると同時に、
・単に疾病又は病弱が存在しないことではない
※出典:厚生労働省「健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/dl/1-00.pdf
としておりますので、やはり単に無病だけが健康ではないという点を改めて見つめなおす必要があります。つまり、ここで考えなければならない点のひとつに挙げられるのが
健康寿命の長寿化
で、主に中高年以降、加齢によって急速に低下する体のさまざまな機能をいかに長寿化させるか?という点を意識していかなければなりません。
ちなみに、「健康寿命」については、過去記事「▼「イタタッ」が口癖?膝や肩関節が痛む中高年のためのロコモ対策」でも詳しく取り上げておりますが、おさらいをしておきますと、健康寿命の定義は
健康上なにも問題がない状態で日常生活を送れる期間
のことを指し、ご承知のとおり平均寿命は年々伸びているのに合わせて、健康寿命も70代前後と比例的に伸びつつある一方、下図のように「平均寿命と健康寿命の差」があまり縮まっておらず、高齢になるほど日常生活に何かしらの制限が起きることが浮き彫りとなっております。

画像出典:e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/
hale/h-01-002.html
そこで今回は、この健康寿命を延伸すべく「いつまでも元気でいるためのロコモ(運動器症候群))対策」と称し、高齢になっても自らの体の機能で日常生活を送るための意識と、中高年から気を付けておきたい生活習慣、そして
生活の質(QOL)に対して一番影響をおよぼす運動機能の低下
をどのように対策すべきかを考えていきたいと思います。
年齢を重ねるごとに思うように体が動かなくなったり、あちこちの関節が痛んだりして、心身も衰えやすくなります。このような状態をフレイルと呼び、フレイルによって身体機能も低下、抵抗力も衰えてしまうことから、怪我や病気にもかかりやすくなってしまいます。
こうした状態にならないためにも、中高年のうちから「健康寿命」を意識することの大切さをこの記事で再認識していきましょう。
ミドル世代から要注意!生活・食習慣による下肢機能への影響

個人差こそありますが、加齢症状が本格化する40代後半以降は、体の機能向上より、
身体機能の現状維持
を心がけ、規則正しい生活習慣から食生活、適度な運動習慣を身に付ける必要があることは、これまでの記事でも多数取り上げてきました。ただ、働き盛りの40~50代においては、「健康」以上に仕事や私生活が優先されてしまう傾向にあるため、
言葉では分かっていても実践が難しい
というのが実情でもあります。
みなさんもご承知のとおり、高齢者になればなるほど体力や筋力は低下し、骨格も弱くなり、歩いたりしゃがんだりの運動機能が低下しやすいことは説明の余地がありません。ただ、加齢によって筋量が減少すると言われても、なかなかイメージが沸かないかもしれまませんし、なぜ運動機能が低下してしまうのか?という点においては
加齢によって筋繊維の数が減少・筋線維が委縮
してしまうことが挙げられます。
これら筋量が減少することで、骨や関節への負担が増え、腰や膝、股関節などの関節痛を引き起こしやすくなることで余計に運動量が減り、
なおさら筋線維が委縮してしまうという構図
ちなみに、加齢によってどの程度筋量が減少してしまうかについては、年齢ごとの平均身長,平均体重および筋肉量の値で、ある程度把握することが可能ですが、
■男性
18~ 24歳:身長171.3cm 体重64.2kg 筋量52.6kg
45~ 54歳:身長169.6cm 体重68.9kg 筋量52.7kg
65~ 74歳:身長163.6cm 体重62.8kg 筋量47.5kg
85歳以上:身長156.3cm 体重55.4kg 筋量40.2kg
出典:J-Stage「老年医学会雑誌」日本人筋肉量の加齢による特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/
geriatrics/47/1/47_1_52/_pdf
上記を踏まえると、60代以降に急激に筋肉量が減少し、85歳以上ともなると
20代と比較して約17%程度筋量が減少する
ということが分かります。
全身の筋肉においては、約60%が下肢筋肉に集中しているため、
当然加齢による筋量の減少も下肢筋肉が多く減少
することで、歩いたり、走ったり、しゃがんだり昇ったりの日常動作が困難になってくるのです。よって、筋量減少が顕著化する前、40~50代前後くらいからは、嫌でも減ってしまう下肢筋肉を如何に減らさないようにするかを考え、日常的な運動習慣はもちろんのこと、食生活においても
筋肉を作るたんぱく質が豊富な食事
を心がけたり、骨格を健康に維持するためにもカルシウムやビタミンDなどの栄養素をしっかりと摂るなどの対策が必要になってくるのです。ロコモ対策においては、運動機能の低下が出てからでは対応が難しいため、
運動器がまだ活発な年齢こそ、ロコモ対策を始めるタイミング
という認識のもと、運動面からも食生活面からも下肢運動機能の維持を心がける必要があるということを覚えておくようにしましょう。
「ロコモ対策」に関する人気記事
ロコモ対策「ロコトレ」の基本は運動~骨と筋肉の維持を目指そう!

これまでのご説明のなかで、無病はもちろんのこと、健康寿命が非常に大切であることはお分かりいただけたかと思います。特に男性とくらべ、筋量が元々少ない女性においては、加齢による骨格筋の衰えを背景としたロコモ比率が高く
70代の実に半数近い方が運動器症候群(ロコモ)に該当
※出典:国立長寿医療研究センター「ロコモティブシンドローム(ロコモ)をご存知ですか」
https://www.ncgg.go.jp/ri/advice/11.html
といったデータもありますので、男女問わず他人事ではないことは数値からも見て取れます。ただ、加齢においては「上手に付き合っていく」ことも大切ですが、他の加齢症状とは異なり、骨や筋肉においては一定の栄養素や運動による負荷によって
維持もしくは増強させることも可能!
70代でもボディビルダーがいるように、日々の食習慣や運動、トレーニングによって運動機能を低下させることなく、いつまでも自身の意思で歩いたり、走ったりができることは決して珍しいことではないのです。健康寿命を延ばす「ロコモ対策」においては、
運動を中心としたロコモ対策習慣「ロコトレ」が必須!
といっても過言ではありませんので、ここでは特に留意したい中高年からの運動機能の低下や症状、そしてそれぞれの症状に合わせた「ロコトレ」について幾つかピックアップいたします。
1,下肢筋力の低下に対するロコトレ
日々のウォーキング習慣はもちろんのこと、日によっては階段の昇り降り、坂道の昇り降りなど、平坦な道を歩くだけでなく、負荷を高めた運動を取り入れるのが効果的。下り坂は膝への負担が大きくなるので、膝関節に不安がある方は、後ろ向きで坂道を降りると良いでしょう。
また、筋力強化だけでなく、筋肉の柔軟性を高めるためにも、運動前の前後10~20分はストレッチを入念に行い、ケガをしないよう注意しましょう。この前後10分のウォームアップ・クールダウンが非常に重要となります。
2,膝や股関の関節痛対策
膝や股関節などの関節痛のためウォーキングなどの有酸素運動が行えない場合は、水泳や自転車など、関節への負荷が小さい運動を取り入れることもポイントです。加齢によって関節軟骨なども柔軟性が低下するため、運動による痛みが出やすくなる年頃でもありますので、くれぐれも無理は禁物。
過去記事「▼重要なのは筋肉の柔軟性!?ヨガを用いた膝痛セルフケア」でもご紹介しておりますが、体重を増やさない、姿勢を正す、無理のないストレッチで筋肉の柔軟性を高める、といった点を意識するようにしましょう。
3,女性に多い骨密度の低下「骨粗しょう症」対策
骨密度の低下によって骨がスカスカになり、骨折などを起こしやすくなるのが骨粗しょう症。骨密度の低下要因については、加齢はもちろん、カルシウムやビタミンDの摂取不足、そして女性ホルモン「エストロゲン」不足など、特に閉経後の女性は急激に骨粗しょうの状態になりやすいため注意が必要です。
筋肉とは異なり骨自体を強化することはできませんが、中高年から意識的に骨格筋を強化するタンパク質やカルシウム、ビタミンDやKといった栄養素をしっかりと摂ることで、骨密度の低下を抑制することが可能。栄養素を考慮した食事そのものもロコトレになることを覚えておくようにしましょう!
いかがでしたでしょうか?
ロコモ対策「ロコトレ」は、思っているより特別なことを行っている訳ではなく、
下肢筋力や運動機能にフォーカスした生活習慣のひとつ
になります。70~80代以降も元気に自分の意志で歩きまわるためにも、40~50代の中高年からしっかりと対策し、「下肢筋力の貯金をしておく」といったイメージで、健康的な生活習慣・食習慣・運動習慣をキープするよう心がけましょう。