妊娠中に不足しがちな栄養素と積極的に摂りたい食材・食べ物

妊娠中に食欲が増すメカニズムとプロゲステロンの働き

妊娠中に食欲が増すメカニズムとプロゲステロンの働き

女性にとって人生最大のライフイベントとも言える「妊娠」
少子化が社会問題化するなかで、妊婦さんに対する体やメンタル面での負担に対する理解をもっと深める必要がありますが、特に初産の妊婦さんにおいては、自身の体の変化や出産に対する不安など、何かと負担が大きいのが実情です。

妊娠に対する喜びと同時に、妊娠初期の「つわり」や肌荒れ、泌尿器機能の変化など、

これまで経験したことのない体の変化に見舞われる

ため、必然的にこれまでの生活が不自由になったり、体調不良でやる気が出ないなど、生活の質が低下してしまう傾向にあります。特に妊娠初期の症状においては、個人差こそあれど「つわり」によって食欲が低下したり、初期後半からは逆に急に食欲が増したりと、

食欲や食生活においては不安定になりがち・・・

さらには、妊娠前と妊娠後で食べ物の好みが変わったり、匂いや味に敏感になることも珍しくありません。妊娠初期は、つわりによって食欲が減退する傾向にありますが、中期ごろになるとつわりも落ち着き、徐々に食欲が増してくるため、多くの妊婦さんが

お腹の子供のぶんまで栄養を摂らなきゃ

と考えがちですが、じつはこれ、女性ホルモンのひとつである

プロゲステロン(黄体ホルモン)の働きによるもの

女性ホルモンのエストロゲン・プロゲステロンの働きにおいては、過去記事「▼強い眠気で仕事がはかどらない!妊娠症状と仕事の付き合い方」でご紹介しておりますが、プロゲステロンの役割は「妊娠の維持」。妊娠すると食欲が増大したり、やたらと眠くなったりするのは、このプロゲステロンが増えるからなのです。

もちろん、プロゲステロンの本来の働きは

・体内の水分や栄養素を蓄える
・基礎体温を上げて免疫力を高める
・乳腺を発達させる

などが挙げられますが、結果的に食欲が増すのは事実で、体内の胎児に対してしっかりと栄養を与えるためにも、発育に必要な栄養素をしっかりと摂ることが肝要。食欲が増すからといって、スナック菓子やスイーツ、ジャンクフードなどを無作為に食べるのは、

プロゲステロンの働きに反する行動

といっても過言ではありませんので、なぜ食欲が増すのかを冷静に考え、必要な栄養素や妊娠中に不足しがちな栄養素をしっかりと摂ることを心掛ける必要があります。

今回は、そんな妊娠中に不足しがちな栄養素と積極的に摂りたい食材を中心にご紹介。
妊娠初期のつわりが落ち着ついたら、いよいよ本格的にお腹も膨らみ、胎動が感じられる時期になってくると同時に、食欲も体重も増えてきますので、

胎児にとって不健康な体重の増え方を避ける

ためにも、自身が摂るべき栄養素をしっかりと学んでおくようにしましょう。

胎児に栄養が送られる妊娠中期以降に不足しがちな栄養素

胎児に栄養が送られる妊娠中期以降に不足しがちな栄養素

では、実際に食欲が増す妊娠中期以降で、どのような栄養素を意識して摂れば良いかを見ていきましょう。ただし、必要な栄養素を難しく考える必要はなく、

普段の生活のなかでも欠かせない栄養素が中心

となりますので、バランスの取れた食事が大前提となることは認識しておきましょう。

【妊娠中期以降に不足しがちな栄養素】
・筋肉や臓器を作るのに欠かせないタンパク質
・胎児の骨格を形成するカルシウム
・胎児の成長と血液量増加に伴う鉄分
・脳の成長に重要な役割を担うDHA

上記のとおり、基本的に脂質・炭水化物・タンパク質といった3大栄養素に加え、ビタミン・ミネラルを加えた5大栄養素を中心にバランスの取れた食事を心掛ける必要があります。なお、妊娠初期においては

神経系の発達に不可欠な葉酸を意識的に摂る

ということが言われ、葉酸を多く含むブロッコリーやほうれん草、海苔などを積極的に摂ることが推奨されますが、まだ妊娠に気づいていない超初期段階で、胎児の脳はある程度できあがってしまうため、葉酸は妊娠準備段階から習慣化するのがおすすめです。

続いて不足しやすい栄養素がカルシウムです。

胎児の骨格を作るために母体のカルシウムが用いられる

ことでカルシウム不足が顕著となります。妊婦さんが骨粗鬆症になるケースも珍しくないため、牛乳や小魚など、カルシウムを豊富に含む食品を意識的に摂ることはもちろん、カルシウムの吸収をサポートする海藻類などのマグネシウムも摂るよう心掛けましょう。

次に注意したい栄養素が鉄や亜鉛などのミネラル類です。

胎児に血液を送るため、非妊娠時より必要な血液量が増加します。妊娠中は必然的に貧血気味となりますので、母体においても胎児においても

鉄分の習慣的な摂取はかなり重要!

吸収率の高い豚・鶏レバーやあさりといったヘム鉄を中心に毎日の食事に取り入れるほか、厚生労働省では、胎児の細胞分裂を手助けする亜鉛も同時に摂ることが推奨されています。

※出典:厚生労働省「《参考資料1》対象特性 1 妊婦・授乳婦」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai
-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114401.pdf

その他にも、筋肉や体の組織を作るタンパク質はもちろん、妊婦さんの多くが悩む便秘を回避すべく食物繊維、血液を作るうえで必要となるビタミンB群など、不足がちになる栄養素は数多くあります。食事の支度だけでたいへんかもしれませんが、冷食やお総菜などでも良いので、5皿以上の多品目のおかずを意識した食事を心掛けるようにしましょう。

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非妊娠時の+500kcal目途に効率良く必要な栄養素を摂るポイント

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上述のとおり、妊娠中期以降はプロゲステロンの働きによって食欲が旺盛となり、それと同時に胎児に対して

多くの栄養が母体から提供されるため

カルシウムや鉄分・亜鉛などのミネラル類が慢性的に欠乏しやすい点をご紹介しました。ここで注意すべき点は、食欲が増加するからと言っても、胎児にとって不要な栄養素ばかり摂取してしまったり、過食気味になったとしても

不足する栄養素がまったく摂取できていない

という状態になり、胎児にも何かしらの影響がでる可能性がないとは言えません。
一般的に妊娠中は、胎児への栄養も加味して「非妊娠時よりも多くのカロリーを摂取した方が良い」という認識が広まっており、厚生労働省においても

・妊娠初期で+50kcal
・妊娠中期で+250kcal
・妊娠初期で+500kcal

といったエネルギー摂取基準を設けております。

※出典:厚生労働省「妊娠期・授乳期にはエネルギーの必要量が増加」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl
/h0201-3a3-02b.pdf

ただし、摂取カロリーだけを見てしまいますと、上記で挙げた「不足しがちな栄養素が摂れていない」状況になりかねませんので、母体・胎児の健康のためにも摂取カロリーを重視するのではなく、

必要な栄養素がしっかりと摂れているか?

をチェックすることが重要です。なお、出産後の授乳婦時においても引き続きより多くのカロリー摂取(+450kcal目安)が推奨されますが、こちらも同様に摂取総カロリーを意識するのではなく、下記のような不足しがちな栄養素を意識的に摂るよう心がけましょう。

特に胎児に栄養を与えるという観点では

1,カルシウム&マグネシウムを積極的に摂る
≪カルシウムが豊富な食材≫
ワカサギやししゃもなどの小魚、牛乳やチーズなどの乳製品

≪マグネシウムが豊富な食材≫
青のり、わかめなどの海藻類、干しエビやひじきなど魚介類

2,鉄・亜鉛・カリウムなどのミネラルを多く摂る
≪鉄分が豊富な食材≫
豚・鶏レバーやマグロなどの赤身魚、あさりやシジミなどの貝類

≪亜鉛・カリウムが豊富な食材≫
牡蠣や牛赤身肉、ひじきや昆布などの海藻類

3,野菜類からビタミンや食物繊維を意識的に摂る
≪ビタミン類が豊富な食材≫
各種ビタミンと栄養価が高い野菜として、ほうれん草・ブロッコリー・ピーマンなどが挙げられます。

≪食物繊維が豊富な食材≫
ひじきやわかめなどの海藻類、干し椎茸やきくらげなどのキノコ類

特に胎児に栄養素が送られる妊娠中期以降は、お腹も目立つようになってくるため、何かと無理が効かなくなり、食事の支度も億劫になってしまう傾向にありますが、レンジでチンするだけの冷凍食品なども上手に活用し、多品目の食材が取れるよう心がけるようにしましょう。

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