お酒の席の常套句「トイレが近い」~実は頻尿の可能性
宴席あるある~一度トイレに行きだすと尿意が繰り返される理由
社会人ともなれば、嫌でも機会が増えてくるのが飲酒を伴う宴席。
近年では、会社での飲み会なども減少傾向にあるようですが、それでも12月や1月などは、忘年会や新年会が多く開催され、繁華街では連日のようにほろ酔い気分のサラリーマンの姿を見ることが多いのではないでしょうか?
そんな楽しいはずの飲み会・宴会ですが、中高年ともなると気になってくるのが
繰り返し訪れる尿意
特に飲酒時においては、もちろん個人差はあれど、一度トイレに行きだすと尿意が止まらなくなってしまう傾向にあり、その度に席を立つのが恥ずかしいという人も少なくありません。大切な取引先との接待の席などではなおさらかもしれません・・・
言うまでもなく宴席においては、お酒を飲み続ける・水分を摂り続けますので、尿意を感じやすくなるのは至って普通のこと。でも、普通に水を飲んでもさほど尿意を感じないのに、
お酒だとどうして頻繁にトイレに行きたくなるの?
という点については、多くの方が疑問に感じていたとしてもあまりよく分かっていないのが実情かもしれません。アルコールを摂取するとトイレが近くなる原因については、すでに様々な箇所で説明がなされておりますが、
尿量を抑制するバソプレシンというホルモンの働きが低下するため
であり、アルコールによってバソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])の分泌が低下し、
働きが弱まることで利尿が制御されにくくなり
トイレの頻度が増えてしまうというメカニズムです。
飲酒時にトイレの頻度が増えることは、言わば生理現象のひとつで避けることができないので、この状態に対して健康リスクを過度に感じる必要はありませんが、バソプレシンの分泌を司る脳下垂体の異常による「下垂体性ADH分泌異常症」といった疾病においては、
尿量の調整が上手くできずに頻尿に近い症状となる
傾向がありますので注意が必要。
下垂体性ADH分泌異常症のひとつとなる「バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)」においては、尿量が増加することはもちろん、大量の水分を摂取しても喉が渇くなど、尿量とホルモンの働きには密接な関係がありますので、同じバソプレシンの機能ではありますが、アルコールによる頻尿とは区別して考える必要があります。
そこで今回は、「お酒を飲むとトイレが近くなる」をテーマに、抗利尿ホルモン(バソプレシン)が受けるアルコールの影響や働きが低下するメカニズムにフォーカスし、宴席での尿意を抑制するための方法などについてご紹介いたします。もちろん、尿意を無理に我慢する必要はありませんが、
座る席によってはトイレに行きにくい状況・・・
なんてこともあるかもしれませんので、取れる対処法があればぜひ知っておきたいところ。「トイレが近いから通路側の席で!」なんて言わなくても、飲み会や宴会が楽しめるように、基本知識を身につけておきましょう。
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そもそも酒席でトイレによく行く人と行かない人の差ってなに?
・楽しいはずの飲み会が、トイレが近いせいで緊張してしまう
・緊張するせいで余計に尿意をもよおしてしまう・・・
・トイレにすぐ行ける席じゃないと安心して座れない
トイレが違い人には、そうでない人には理解できないような心労があるのが実情で、仲の良い人同士の飲み会・宴会であればそれほどではなくとも、取引先との接待などによる宴席となると、緊張して余計にトイレが近くなってしまうことも珍しくありません。
お酒(アルコール)を飲むと途端にトイレが近くなるメカニズムにおいては、上述のとおりバソプレシンという抗利尿ホルモンの分泌量が低下し、抗利尿の働きが低下することで尿量が増え、トイレの頻度が増加するということはご説明しましたが、仮に同じ量お酒を飲んでいるのに、
トイレが近くなる人とならない人がいる
ということも不思議に感じる点のひとつかもしれません。
こうした事実において、多くの方が
自分は膀胱サイズが大きいから~
なんてことを一度は聞いたことがあるかもしれませんが、それって本当なのでしょうか?
実は膀胱においては、胃や肝臓、腎臓などの内臓器官とは異なり、その容量は
200mlから1000ml程度と個人差がとても大きな臓器!
平均的な膀胱の最大容量は男女問わず300~500mlで、150~200mlも溜まると尿意を感じるようになります。よって、「膀胱サイズが大きいから~」と公言している人は、まんざら気のせいではないのです。
尿がある程度溜まってくると尿意を感じ、排尿ができる状況になると、脳が「排尿していいよ」という信号を膀胱に送り、膀胱の筋肉の収縮と弛緩によって尿が排出されるというメカニズム。過去記事「▼尿漏れはなぜ起こる?尿漏れのメカニズムとその原因」でも触れているように、加齢による中高年の尿漏れは
この膀胱の筋肉の収縮と弛緩機能や神経の衰え
が主な原因であることはご紹介したとおりです。
では、もう一つの疑問
一度トイレに行くと何度も行きたくなるのはなぜ?
という点ですが、飲酒時の尿の特徴として「無色透明」であることが多いのですが、飲酒によって体内に取り込まれたアルコールによってバソプレシンの働きが低下し、尿中の水分を十分に回収できなくなることで、たくさんの水分が尿として排出されるようになります。新しく作られた尿は綺麗なため、
体内を通過して排出されるまでのスピードが速い
ということもトイレに行きたくなる原因。
もちろん、綺麗な状態のまま体外に排出されるため、尿の色が「無色透明」であることが多く、実は必要以上に尿として水分が排出されてしまうため、体内の水分が不足・脱水症状になることもあるのです。アルコールによって低下したバソプレシンの働きを正常化させるためには、
体内のアルコールを分解することが重要
で、そのアルコールを分解するのに必要となるのが水分となるため、特にビールなどの利尿作用の高いお酒を飲む際には、途中で水を飲むことでバソプレシンや膀胱の働きを正常に戻すことが大切。トイレが近くなるのを懸念して水分を摂らないようにしてしまいがちですが、逆に水分を摂った方が脱水症状や二日酔いを抑えるのに効果的ということは覚えておきたいところです。
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さて、お酒の席における頻尿状態のメカニズムは概ね理解できたかと思いますが、アルコールによるバソプレシンの分泌減少・機能低下については、飲酒起因以外にも上述したバソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)や、尿が無色透明な状態が続く場合には、糖尿病などが疑われるケースがあります。
その他、特に中高年男性においては飲酒時に尿意をもよおすけど、
実際にトイレに行ってもさほど尿が出ない
といった前立腺肥大が疑われるようなケースも散見されるようになります。
いずれにせよ、加齢などによって体の様々な機能が低下する中高年においては、泌尿器においても前立腺肥大症やストレスなど心因性による過活動膀胱などが見られるようににり、
単に飲酒の一時的な影響だけではない
ということも多いため、頻尿が気になるようであれば専門医の診断を受診することがおすすめ。もちろん、自身でも取れる対策はありますが、慢性的な頻尿は他の大きな疾病の可能性もありますので、
まずは専門医で自身の状況を把握したうえでの対策
を幾つかご紹介いたしますので、特に飲み会や宴席などお酒を飲む機会の多い人は、意識してみると良いかもしれません。
1,利尿作用の高いお酒・飲料をできるだけ避ける
アルコールの量が増えるほど利尿作用は強くなりますので、飲む量を控え目にする、アルコール度の高いお酒を避ける、合間に水を飲む、ということを心掛けるようにしましょう。
2,お腹を圧迫するような座敷などを避ける
大人数での宴会ともなると、座敷利用が多くなる傾向にありますが、腹部を圧迫することで膀胱や尿道も圧迫し、トイレが近くなる場合があります。また、緊張やストレスも尿意の原因となりますので、緊張するような接待であってもストレスを感じないようにしましょう。
3,お茶などに含まれるカフェインを控える
焼酎のお茶割りやウーロンハイなど、お茶などに含まれるカフェインも利尿作用の高い飲み物となるため、トイレが近くなる要因となり得ます。また、ビールだけでなく赤ワインもカリウムを多く含み、利尿作用を高めますので、こうしたお酒を避けるのもポイントのひとつです。
いかがでしたでしょうか?
飲酒時の尿意は生理現象であるがゆえ、見方を変えれば「正常」ということでもありますので、無理して我慢するより、回数が多くてもトイレにいくことをためらう必要はないかもしれません。ただ、女性は「恥ずかしい」と感じる人も少なくないため、できる限りトイレに行きやすい席に座る、お酒の合間に水を摂る、といった対策を取るようにしましょう。
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